お盆の迎え火ってなぜ火を焚くの?
お盆の時期になると、「迎え火」や「送り火」という言葉を目にします。
特に迎え火は、お盆の初日(13日)に、ご先祖様の霊が迷わず戻ってこられるように玄関先で焚かれる火のこと。
けれど…
- なぜ火を焚くの?
- 何を燃やすの?
- 地域によってやり方が違うの?
この記事では、迎え火の深い意味とその背景、そして現代のスタイルまで丁寧に解説していきます。
迎え火の意味と役割|霊を導く“目印の火”
迎え火は、ご先祖様の霊を“導くための目印”として焚く火です。
遠くから帰ってくる霊が迷わないように、
また、温かく迎える気持ちを込めて焚かれる“灯り”でもあります。
玄関先や門口で小さな火を焚くのが一般的で、
夕暮れ時に静かに燃える火には、どこか神聖な空気が漂います。
2. 迎え火の由来を深掘り|仏教・民間信仰・火の文化の交差点
■ 仏教的な由来
- 仏教では、霊は目に見えない存在として認識され、灯明(とうみょう)=光を捧げることが霊を導く行為とされています。
- 「迎え火」もその灯明の一種と考えられ、仏様や祖霊に対する敬意と祈りが込められています。
■ 民間信仰としての迎え火
- 古代日本では、“火”が清めと境界を意味する特別な存在でした。
- 火を使って神や霊を迎える風習は、神道や民間信仰にも広く見られます。
- 特にお盆の時期は、“あの世”と“この世”がつながる時期とされ、火が両界を結ぶ橋渡しと考えられていたのです。
■ 火を使う文化的意味
- 火には「けがれを祓う」「結界を作る」「魂を導く」など、さまざまな象徴的な意味があります。
- 迎え火は、その象徴が凝縮された日本的“おもてなし”の儀式ともいえるのです。
3. 迎え火の実施方法と使われる“おがら”とは?
■ 一般的な迎え火の方法
- 7月または8月13日の夕方に行う(地域によって異なる)
- 玄関先や門の前で、小さな素焼きの皿(焙烙・ほうろく)の上に「おがら(麻の茎)」を置いて焚く
■ “おがら”とは?
- 麻の皮を剥いだ後の芯を乾燥させたもの
- 清浄・魔除けの力があるとされ、古来より神事にも使われてきた素材
※最近では、煙が出ない電子迎え火や、キャンドル・LED提灯などを用いる家庭も増えています。
4. 地域差と現代の迎え火のスタイル
■ 地域による違い
- 迎え火の形式は地域によって異なり、
東日本では7月13日、西日本では8月13日が多い - 門口に小さな松明を立てる地方もある
- 火を焚かず、盆提灯を灯すことで迎え火とする風習も一般的に
■ 現代の暮らしに合わせた工夫
- 防火の観点から、実際に火を焚くのが難しい住宅環境も増えています
- 最近はLED提灯・キャンドルタイプの迎え火グッズも登場
- 高齢者や小さなお子様がいる家庭では、安全性と気持ちのバランスをとった工夫がされています
まとめ|迎え火は、心で焚く“灯り”でもある
迎え火は、古くからの信仰と日本人の美意識が融合した、
ご先祖様を大切に想う心を“火”に託した儀式です。
- 火の光で導き、
- 火のぬくもりで迎え、
- 火の静けさで祈る
たとえ現代では火を焚くことが難しくても、
その気持ちや意味を受け継いでいくことこそが“本当の迎え火”かもしれません。
コラム|「迎え火」と「送り火」の違いとは?
お盆の時期に行われる火の行事には、「迎え火」と「送り火」の2つがあります。
名前は似ていますが、役割も意味もまったく異なるものです。
項目 | 迎え火 | 送り火 |
---|---|---|
行う日 | お盆の初日(7月 or 8月13日) | お盆の最終日(7月 or 8月16日) |
意味・目的 | ご先祖様の霊を“家に迎える”目印 | ご先祖様の霊を“あの世へ送る”目印 |
用いるもの | おがら、焙烙、提灯など | 同様におがらや提灯、地域によっては灯籠や送り火山など |
気持ちの込め方 | 「ようこそ、お帰りなさい」 | 「ありがとうございました、また来年」 |
儀式というより、“心のけじめ”として
迎え火と送り火は、あくまでご先祖様との心のやりとりのようなもの。
物理的に火を焚くことが難しい場合でも、灯りを灯したり、静かに手を合わせることで、
「来てくれてありがとう」「また来年もお待ちしています」と伝えることができます。