田の神さまを見送り冬仕度を始める日――十日夜(とおかんや)

秋の行事
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十五夜・十三夜に続く“三つ目の月見”として語られる十日夜。

けれど実際は月見よりも“稲作の締めくくり”の意味合いが濃い行事です。

旧暦10月10日(2025年は11月29日)に、田んぼを守ったかかしや土中のモグラをねぎらい、田の神さまを山へ送ります。

関東・甲信越を中心に残る素朴な風習に目を向ければ、冬支度の始まりを感じるはずです。

行事の基本情報

区分内容
名称十日夜(とおかんや/とおかや)
日付(2025年)11月29日(土)〈旧暦10月10日〉
主な地域関東・甲信越・東北など東日本
別名刈り上げ十日・案山子上げ・大根の年取り など
行事目的稲の収穫感謝と翌年の豊穣祈願、田の神送り
代表的な風習かかしあげ/藁鉄砲(モグラ追い)/大根の供え物

※新暦10月10日や11月10日に行う地域もあり、日取りは地域差があります。

由来と歴史

田の神と案山子

農耕民俗では、田植え時に山から降りて稲を守る神が、収穫後に山へ戻ると考えられてきました。

案山子(かかし)はその依代(よりしろ)。

十日夜の晩、かかしを田から家に移し餅や蕎麦を供えて感謝する「かかしあげ」は長野や群馬で今も行われています。

藁鉄砲とモグラ追い

子どもたちが藁を束ねた「藁鉄砲」で地面を叩きながら歌う風習は、モグラ・野鼠を追い払い大地を活性化する呪術的行為でした。

叩き終えた藁鉄砲を柿の木に吊るすと豊作になるという伝承も残ります。

西日本との対比

関西以西では同じ旧暦時期に「亥の子」が行われ、臼を撞いて家々を回る点を除けば目的はほぼ共通。

東西で呼び名と道具が異なるのは、在来信仰と中国由来行事が混じり合う過程で分岐したためとされます。

現代の過ごし方

実践例内容
① かかしモチーフの飾り稲わらリースやミニ案山子を玄関に飾り、感謝と疫病除けを祈願
② 新米で作る「亥の子餅」旧来は大豆・小豆入りの餅が定番。今は黒豆入りや栗餅などアレンジ多彩
③ 家庭菜園の土慣らし藁鉄砲の習俗にならい、軽く土を打ち固めて越冬準備を始める
④ 月見&星見月齢27前後の細い月と冬星座の先触れが同時に楽しめる夜

関連する雑学や逸話

  • 大根の禁忌
    十日夜は「大根の年取り」とも呼ばれ、この日に畑へ入ると大根が割れる等の言い伝えが残る一方、神前には二股大根を供える地域もあります。
  • 三月見(さんつきみ)
    十五夜・十三夜・十日夜のすべてで月を眺めると縁起が良いとされ、「三月見が晴れれば翌年豊作」と語られます。
  • かかしの昇天伝説
    長野・諏訪では十日夜の夜、かかしが天へ昇り山の神に変わるとされ、背負子に餅を載せたカエルが従者を務めるというユーモラスな民話が語り継がれています。

まとめ

十日夜は、豊作への感謝と冬への備えを同時に行う“農の締めくくり”。

かかしや藁鉄砲など素朴な民具を通じて、田の神さまとの一年の付き合いに区切りを付ける日でもあります。

2025年11月29日の夜、東日本に伝わるこの行事に思いを馳せつつ、新米や根菜の滋味を味わいながら冬支度を始めてみてはいかがでしょうか。

周辺グルメは地域差が大きいため、長野・群馬などで行事に合わせ発売される「新米餅」や地酒の限定ラベルをチェックしてみるのも一興です。

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