日本の伝統行事である「夏越しの祓（なごしのはらえ）」。
毎年6月30日に全国の神社で行われるこの行事は、「半年間の厄を祓い、清める」ことを目的としています。
しかし、名前は聞いたことがあっても、「なぜ行うのか」「どんな意味があるのか」について、詳しくご存じない方も多いのではないでしょうか？
この記事では、夏越しの祓の由来を神道的・歴史的観点から深く掘り下げ、茅の輪くぐりや地域の特色ある行事、さらに関連する伝統的な食べ物まで詳しく解説します。
夏越しの祓の基本情報
- 行事名：夏越しの祓（なごしのはらえ）
- 開催日：毎年6月30日
- 地域：日本全国
- 特徴：半年間の厄を払い、新たな半年を迎えるための浄化の行事
夏越しの祓の由来と歴史
諸説
「夏越しの祓」は、奈良時代以前にまで遡る古い歴史を持つ神道行事です。日本には「祓（はらえ）」と呼ばれる浄化儀式が古くから存在し、夏越しの祓は「大祓（おおはらえ）」と呼ばれる重要な儀式の一つです。
大祓は「夏越しの祓（6月末）」と「年越しの祓（12月末）」の年2回行われます。特に夏越しの祓では、夏の暑さや湿気で心身にたまった厄や病気を払い清める意味が強く込められています。
また、この行事には神道だけでなく、仏教や陰陽道（おんみょうどう）の影響も大きく見られます。
- 神道的な背景
神道では、神々に祈りを捧げる前に身体を清める「禊祓（みそぎはらえ）」が重要とされ、夏越しの祓でもこの考えが基礎になっています。 - 仏教の影響
仏教伝来後は、「夏を健康に乗り切るために邪気や病を払う」という仏教的な考えが融合し、「除災招福」の意味合いも持つようになりました。 - 陰陽道の影響
平安時代に陰陽道が盛んになると、「半年間の悪い気（穢れ）を払う」という陰陽五行思想が結びつき、より強力な祓いの行事として定着しました。
私の一押しの諸説
夏越しの祓の魅力は、やはり神道における清めの儀式を土台に、仏教や陰陽道といった異なる思想が融合した点にあります。日本の歴史的な宗教観や民間信仰が交じり合った、非常に奥深い行事です。
現代の姿と代表的な儀式【深掘り】
現代の夏越しの祓には、代表的な儀式が二つあります。
茅の輪くぐり（ちのわくぐり）
最も有名な儀式です。茅草（ちがや）を編んだ大きな輪を境内に設置し、それをくぐることで半年間の厄や罪穢れを払います。
人形流し（ひとがたながし）
「人形（ひとがた）」と呼ばれる紙製の形代（かたしろ）に自分の穢れを移し、それを川や海に流すことで厄を払う地域もあります。特に関西地方や一部の神社で盛んです。
地域ごとの特色ある夏越しの祓
- 京都・上賀茂神社（夏越大祓）
境内で大規模な茅の輪くぐりが行われ、多くの人が参拝します。 - 奈良・大神神社（三輪神社の夏越祓）
神水を使った独特の禊ぎの儀式が特徴です。
夏越しの祓にまつわる食べ物「水無月（みなづき）
特に関西では「水無月」という和菓子を食べる風習があります。
ういろうの上に小豆が乗った三角形のお菓子で、小豆は厄除け、三角形は暑気払いの氷を象徴しています。
夏越しの祓の豆知識や逸話
- 茅の輪くぐりの際に唱える言葉「水無月の 夏越の祓する人は 千歳の命 延ぶといふなり」は、平安時代から伝わる和歌です。
- 茅の輪の茅草には病気や疫病を防ぐ効果があると古くから信じられていました。
まとめ
夏越しの祓は、半年間の罪や厄を払って新しい半年を迎えるための貴重な伝統行事です。
その奥深い由来や全国で異なる特徴的な儀式、関連する食文化を知り、日本の季節感を改めて楽しんでみてはいかがでしょうか？
