夏になると、時おり届く「暑中見舞い」のハガキ。
カラフルな絵柄や涼しげな文面に、ほっとするような懐かしさを覚える方も多いのではないでしょうか。
しかし、「なぜ夏に見舞いを送るの?」「暑中っていつのこと?」と、具体的な意味や由来までは知られていないかもしれません。
暑中見舞いは、実は日本人が季節と人とのつながりを大切にしてきた歴史の象徴ともいえる風習なのです。
この記事では、暑中見舞いの由来や起源をたどりながら、どのように現代に受け継がれてきたのかを紐解いていきます。
暑中見舞いの由来と歴史をたどる
江戸時代:お盆の贈り物がルーツ
暑中見舞いの起源は、江戸時代にまでさかのぼります。
当時、人々はお盆の時期に里帰りをし、先祖の霊にお供え物を届ける習慣がありました。
この行為は同時に、普段お世話になっている人々にも贈り物を渡す、いわば「感謝の夏便り」のような意味合いも含んでいました。
特に直接会えない相手には、贈り物だけを使者に託す形で届けられることも多く、これが後の「暑中見舞い」の原型となったと考えられています。
明治時代:郵便制度とともに広がった挨拶状
明治時代に入ると、郵便制度の整備とともに、暑中見舞いは「贈り物」から「挨拶状」へと形を変えていきます。
- 1871年に郵便制度が始まり、気軽に手紙やハガキを送れるようになったことで、
- 季節のあいさつをハガキで伝える文化が急速に普及しました。
この頃から、暑中見舞いは一般庶民にも広がり、親しい人や遠方の知人に対して健康を気遣う手紙を送る風習として定着していきます。
昭和時代:「暑中見舞いはがき」の登場と定着
1950年(昭和25年)には、当時の郵政省が「暑中見舞用郵便はがき」を初めて販売。これを記念して、6月15日が「暑中見舞いの日」とされています。
この頃から、企業や商店が顧客向けに送る「暑中見舞いDM」なども登場し、暑中見舞いは個人だけでなくビジネスでも重要な夏の習慣となりました。
いつからいつまで?暑中見舞いの時期と「残暑見舞い」への切り替え
- 暑中見舞いを送る時期は、二十四節気の「小暑」(7月7日頃)?「立秋」(8月7日頃)の前日までが一般的とされています。
- 「立秋」を過ぎたら、「残暑見舞い」として送るのがマナーです。
- ただし、近年では梅雨明けの時期がずれ込むことも多いため、地域の気候や相手の状況を考慮する柔軟さも求められます。
現代の暑中見舞い:かたちを変えて続く“想いを届ける”文化
デジタル化が進む現代では、暑中見舞いの数は徐々に減ってきているのが実情です。メールやSNSでの簡単なメッセージに置き換わるケースも増えています。
しかし、手書きのハガキや心のこもった言葉は、今なお特別な印象を与える力を持っています。
季節のあいさつとして、相手の体調を気づかう気持ちを伝える暑中見舞いは、単なる儀礼を超えた「思いやりの文化」と言えるでしょう。
まとめ:暑中見舞いは“日本らしさ”を感じる夏の風習
暑中見舞いは、夏の暑さが本格化する季節に、大切な人の健康や暮らしを気遣うために生まれた風習です。
- もともとはお盆のお供えや贈り物に始まり、
- 郵便制度の発展とともに「挨拶状」というかたちに進化し、
- 現代でもなお、人との距離を縮める心のあいさつとして親しまれています。
たとえ年賀状をやめた方でも、「暑中見舞いだけは出したい」と考える人も多いのではないでしょうか?
今年の夏は、ひとことでも手書きで気持ちを届けてみてはいかがでしょうか。