鮮やかな紅葉が始まる奥日光で、甲冑に身を包んだ武者たちが錦の森を進む――それが毎年10月中旬の「日光東照宮秋季大祭」。
16日の神事流鏑馬では小笠原流射手が疾走しながら的を射抜き、17日には1,200人規模の百物揃千人武者行列が家康公の神輿を護衛する。
世界遺産の荘厳な社殿と秋空を背景に繰り広げられる時代絵巻は、歴史ファンはもちろん写真好きにも忘れがたい体験を与えてくれる。
行事の基本情報
項目 | 内容 |
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行事名 | 日光東照宮 秋季大祭 |
日程 | 2025年10月16日(木) 流鏑馬/17日(金) 百物揃千人武者行列(毎年同日開催) |
主な時間 | 16日 13:00馬場入り・13:30~14:30流鏑馬/17日 11:00行列発輿→御旅所→13:30還御 |
会場 | 日光東照宮表参道?御旅所(神橋近く) |
参加規模 | 行列約1,200人/流鏑馬射手12人 |
アクセス | JR・東武日光駅→世界遺産めぐりバス7分「神橋」下車徒歩15分 |
公式サイト | https://www.toshogu.jp/ |
由来と歴史
秋季大祭は家康公の神霊が久能山(静岡)から日光へ改葬された際の行列を再現する臨時祭として江戸初期に成立した。
行列には鎧武者・鉄砲隊・巫女舞など百種類超の役柄が並び、総勢千人規模で家康公の神輿を護送するさまは「動く戦国絵巻」と呼ばれる。
17世紀後半には流鏑馬が奉納され、馬上の射手が「陰陽射」の掛け声と共に疾走する勇壮な神事として定着。
現在も小笠原流による古式が継承されている。
春の例大祭と並ぶ東照宮二大祭事だが、秋は紅葉シーズンと重なり観覧環境がよりゆったりしている点も魅力だ。
現代の行事の過ごし方
- ベスト観覧ポイント
- 表参道中央:流鏑馬の疾走を正面で撮影可。
- 神橋付近:武者行列と紅葉を同一フレームに収めやすい。
- 御旅所前:舞楽奉納「八乙女の舞」「東遊の舞」が間近。
- スケジュール感(17日モデル)
10:30列整列 → 11:00発輿 → 12:00御旅所祭 → 13:00還御 → 14:00解散。 - 服装・持ち物
10月中旬の日光は日中15-20 ℃、午後は10 ℃前後まで下がる。薄手ダウンと手袋、折り畳みイスがあると安心。 - 交通メモ
開催両日は山内駐車場が午前中には満車に。東武日光駅周辺に車を置き、バス利用が無難。
関連する雑学や逸話
- “百物”とは? ― 槍・弓・鉄砲など百種以上の武具を示すためこの名が付いたという説が有力。
- 流鏑馬の的は檜板三枚 ― 命中した板を授かると「厄除け」「家内安全」にご利益があるとされる。
- 御旅所祭の七十五膳 ― 山海の幸を三品立にして75膳供える格式高い神饌で、江戸期と変わらぬ手順を今も守る。
- 二度目の世界遺産祝賀 ― 1999年の「日光の社寺」登録を機に、秋季大祭で特別に能楽や舞楽が追加奉納された年があった。
おすすめの宿5選
宿名 | 特徴 | 東照宮まで |
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日光金谷ホテル | 明治6年創業のクラシックホテル。陽明門まで徒歩15分、重厚なラウンジと洋食ディナーが評判。 | 徒歩15分 |
ふふ 日光 | 田母沢御用邸そばのラグジュアリー温泉宿。全室自家源泉風呂付きで静かな滞在を約束。 | 車5分/徒歩20分 |
奥の院 ほてる とく川 | 渓流沿いに建つ和風リゾート。庭園露天と個室食が人気、無料送迎あり。 | 車5分 |
日光千姫物語 | 東照宮徒歩10分の純和風旅館。湯波中心の懐石と眺望風呂で女性客から支持。 | 徒歩10分 |
日光ステーションホテルクラシック | JR日光駅正面の好立地。天然温泉大浴場と朝食ビュッフェ、バス発着点へも至近。 | バス10分 |
まとめ
秋季大祭は春の例大祭に比べ観覧スペースに余裕があり、紅葉と武者行列のコラボレーションを堪能できる絶好の機会だ。
流鏑馬の疾走音と甲冑のきらめきが交差する二日間――歴史の息吹を五感で味わい、夜は温泉宿でしっとり余韻に浸ってみてはいかがだろう。
コラム:見学マナー&撮影ヒント
- 行列進行を遮らないよう道路中央での三脚設置は控える。
- 流鏑馬は馬優先、フラッシュ撮影は的前エリア厳禁。
- 機材は望遠200 mm程度まであれば十分。武者行列は低い位置から煽ると甲冑の重厚感が際立つ。
伝統を守る祭りだからこそ、観覧者も思いやりをもって楽しもう。
コラム:日光東照宮をもっと楽しむ豆知識
見どころ | ミニ解説 |
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三猿(見ざる・言わざる・聞かざる) | 厩舎の長い彫刻群 8面のうち2面目に登場。幼少期の猿が「悪いことを見聞き・口にしない」ことで健やかな成長を願う教育的メッセージが込められています。 |
眠り猫(国宝) | 奥宮参道入口の小さな彫刻。うたた寝する猫の下で二羽の雀が遊ぶ配置から「泰平の世では捕食者も眠り、弱者も安心して暮らせる」平和の象徴とされます。作者は左甚五郎と伝承。 |
陽明門(別名・日暮し門) | 510体以上の極彩色彫刻がびっしり。家光公が「日が暮れるまで見ても飽きない」と評したことから別名が付いたと伝わります。龍・麒麟など霊獣の細部を双眼鏡で観察するのもおすすめ。 |
逆さ柱(未完成の意匠) | 陽明門の12本のうち1本だけ渦巻き文様が上下逆。あえて“未完成”に留めておくことで「満ちれば欠ける」を避け、建造物の永続と魔除けを願う日本の美意識を示しています。 |
七十五膳神饌 | 武者行列が到着する御旅所で供される神饌は、山海の幸を三方に盛った小膳が75卓。「東照宮の格式は正月並み」と称されたほどの豪華さで、江戸初期の献立書が今も踏襲されています。 |
ワンポイント撮影ヒント
- 三猿は朝の斜光が映え、レンズは50 mm前後が扱いやすい。
- 眠り猫は参拝者が詰まりやすいので望遠レンズを準備し、列に並ばず脇から狙うとスムーズ。
- 陽明門は正午前後に正面が順光。逆さ柱の位置を確認してクローズアップを忘れずに。
このコラムを頭に入れて境内を歩くと、秋季大祭の華やかな神事に加え、東照宮自体が持つ芸術的・思想的な奥深さもよりクリアに感じられます。