火の用心と実りを祝う日――亥の子(いのこ)の由来と楽しみ方

秋の行事
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秋の実りを納めたあとの晩秋、旧暦十月の“最初の亥の日”に祝うのが亥の子です。

西日本では、子どもたちが歌を口ずさみながら地面を突き、家々の無病息災や来季の豊作を願う姿が今も見られます。

京都では宮中行事「玄猪(げんちょ)」をしのぶ神事や、和菓子店の「亥の子餅」、茶の湯の「炉開き」もこの頃。

地域によって実施日や作法は変わるため、見学や参加は各主催の最新案内を確認するのがおすすめです。

行事の基本情報

区分内容
名称亥の子(いのこ)/玄猪(げんちょ)
日取り旧暦十月の最初の亥の日(地域で異なる)
主な地域西日本(四国・九州・近畿など)で広く伝承
代表的な風習亥の子餅を食べる/子どもが石や藁束で地面を突き家々を回る(門付け)
参考例(2025年)京都・護王神社「亥子祭」:2025年11月1日(土)17:00 斎行予定(毎年11/1実施)

※暦サイトでは2025年の「最初の亥の日」=11月2日(日)とする一覧もあります。地域の神社・自治体の案内に従ってください。

由来と歴史

宮中行事「玄猪」から民間へ

起源は古代中国の風習で、亥の月・亥の日・亥の刻に餅を食べると無病息災という慣わしが日本に伝わり、平安期に宮中の年中行事「玄猪」となりました。

のちに武家・町人へ広まり、各地の民俗行事として定着します。

『源氏物語』にも「亥の子餅」が登場します。

茶の湯との関わり――「炉開き」と「口切り」

茶の湯では、亥の月の亥の日ごろに囲炉裏(炉)を開く「炉開き」を行う慣わしがあります。

陰陽五行で亥は「水」を表し、水が火を制すと解されたことから火の用心の願いが込められました。

茶壺の封を切る「口切り」の茶事や、菓子に亥の子餅が用いられることもあります。

農耕儀礼としての「土突き」と門付け

四国や九州などでは、子どもが亥子石や藁鉄砲で地面を突き、家々を回る「土突き」「いのこ唄」の風習が伝わります。

佐賀県唐津市「大白木の亥の子さま」は、文化庁の無形の民俗文化財に選択され、現在も継承されています。

現代の行事の過ごし方

  • 神社の神事に参列・見学する
    例:京都・護王神社の亥子祭(毎年11/1)は、宮中の御玄猪を再現する神事。2025年も11月1日(土)17:00に開催予定と案内があります。
  • 亥の子餅を味わう
    京都では老舗和菓子店で期間販売される例があり、由来や素材に工夫を凝らした商品も。店頭期間は各店の告知を確認してください。
  • お茶の稽古・炉開き
    教室や社中でこの時期に炉開きを行うところがあります。開催日や作法は流派・教室ごとの案内に従いましょう。
  • 地域の民俗行事に参加・記録する
    子どもが主役の行事が多く、参加対象や撮影可否は地域ごとにルールがあります。自治体・保存会の周知をご確認ください。

関連する雑学や逸話

  • 「亥=水」で火伏せの願い
    陰陽五行で「亥」は水を表すため、亥の月・亥の日に火を入れると火災除けになると信じられ、炉やこたつの使い初めに結びつきました。
  • “最初の亥の日”と“二の亥”
    月には亥の日が複数回巡るため、最初の亥を武家、次の亥を百姓が祝う――といった呼び分けが伝わる地域もあります。
  • 和菓子名のバリエーション
    亥の子餅は「玄猪餅」とも呼ばれ、豆や雑穀を混ぜる、猪の背に見立てて筋を入れるなど、地域や店ごとの工夫が豊富です。

まとめ

亥の子は、宮中の玄猪から広がった行事が各地で息づき、火の用心と家内安全、子孫繁栄、豊作祈願を願う日として親しまれてきました。

神社の神事や和菓子、茶の湯の行事など、暮らしの中の“冬支度の合図”として楽しんでみてください。

コラム:京都・護王神社「亥子祭」の見どころ(2025)

  • 平安装束の列が御所へ向かう「禁裏御玄猪調貢ノ儀」の再現、神前での「御舂ノ儀」など、王朝文化の雰囲気を味わえる夕べの神事。参加・拝観方法は年ごとに案内が出ます。

周辺グルメ
烏丸エリアは老舗和菓子店や甘味処が点在。亥の子餅の提供期間は店舗により異なるため、各店告知をご確認ください。


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