「冬の気立ち初めていよいよ冷ゆれば也」__江戸時代の『暦便覧』がこう表現した立冬は、肌に当たる空気がふっと冷たく変わる節目の日です。
実際の気温はまだ晩秋の余韻を残しつつも、暦は冬へ。2025年の立冬は11月7日(金)。
この日を境に日本各地で冬支度の行事や食が動き出します。
歴史的背景を押さえつつ、現代ならではの過ごし方をのぞいてみましょう。
行事の基本情報
区分 | 内容 |
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名称 | 立冬(りっとう) |
位置づけ | 二十四節気の第19節・「四立」の一つ |
2025年の日付 | 11月7日(金)13:04 JST(太陽黄経225°) |
期間の目安 | 11月7日~11月21日頃(次節気「小雪」前日まで) |
意味 | 冬の気配が立ち始める日。以後、立春前日までが暦上の冬 |
公式情報 | 国立天文台「暦要項」 |
由来と歴史
立冬は古代中国の太陰太陽暦で生まれ、日本へは奈良時代以前に伝来したとされます。
太陽の通り道(黄道)を24に分け、農耕や生活の目安とした二十四節気の中で、春夏秋冬各季の始まりを示す「四立(立春・立夏・立秋・立冬)」の締めくくりです。
暦便覧にみる立冬
『暦便覧』(こよみびんらん・江戸後期刊)は立冬を「冬の気立ち初めていよいよ冷ゆれば也」と定義しました。
言い換えれば、空気が冬仕様へ切り替わる“スタートボタン”を押す瞬間です。
日本での受容
平安期には宮中行事の折り目として採用され、江戸時代には農事暦・歳時記と結び付いて各地へ浸透。
立冬前18日間は土いじりを慎む「冬土用」、前日は季節を分ける「立冬節分」と呼ばれるなど、民間信仰や家事の区切りにも応用されました。
今日でも神社の御朱印や歳時記カレンダーに「立冬」の朱字が記されています。
現代の行事の過ごし方
- 冬支度の始めどき
- コートや暖房器具の点検、加湿器の設置などを済ませる家庭が多い。
- 旬を味わう「初鍋」
- かぼちゃ・里芋・冬白菜・牡蠣などが美味しくなる時期で、鍋料理や煮物が定番。
- 養生を意識した行事食
- しょうがや根菜で身体を温める “温活メニュー” がメディアで取り上げられる。
- 星空観賞
- 立冬頃は空気が乾き、オリオン座流星群後の澄んだ夜空が見やすい。天体観測ファンには絶好のタイミング。
関連する雑学や逸話
トピック | 内容 |
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「四立と節分」 | 立春・立夏・立秋・立冬の前日は本来すべて節分。現在広く行事化しているのは立春前日のみだが、寺社によっては冬の節分祭を行う例も。 |
冬隣(ふゆどなり) | 俳句の季語。立冬前後、冬がすぐ隣まで来ているという意味で、晩秋の物寂しさを表現。 |
立冬の初雪便り | 統計的に北海道・東北の山間部から初雪が届きやすい時期。気象庁の平年値でも札幌の初雪平均は11月上旬。 |
鍋と地名 | “ほうとう(山梨)”“きりたんぽ(秋田)”“牡蠣土手鍋(広島)”などご当地鍋のPRが盛んになるシーズン。旅行商品やふるさと納税の特集が組まれる。 |
まとめ
11月7日の立冬は、暦の上で冬の扉が開く日。
『暦便覧』が示すとおり、冷気とともに生活リズムを冬仕様へ切り替える合図です。
衣替えや住まいの冬支度を整え、旬の根菜や鍋料理で体を温めながら寒さ本番を迎えましょう。